「……謝るくらいなら、しないでよ……っ!」

 わたしは、紫音の手を振り切って……逃げた。

 百万円分の、百回の、キス。

 あと九十九回。

 こんなキスをされたら……

 ……わたしは、死んじゃう。

 心が壊れて、死んじゃうよ。



 ……バイト、探そう。

 涙を、ハンカチでごしごし拭きながら。

 ともすれば、しゃくりあげてしまう、息を整えながら、わたしは思う。



 ………バイト探して、早くこんな関係を終わらせよう。

 じゃないとわたし……恋が、出来ない。

 柴田みたいに、先生に向かって『好き』だなんて、とても、言えないから。

 だけど。

 この時。

 大問題があることに気がついて、わたしは、持っていたハンカチを取り落とす。

 父さんは。

 ……わたしが、バイトをすること許して……くれるのかな? という事を。


 普通の部活をすることさえ、良い顔をしないのに。