苦しく。

 切ないキスが終わると。

 大きく肩で息をするわたしの肩を抱いて、紫音は、目を見開いた。

「……あんた、キスの最中に、息をしてなかったのか?」

「……そうよ」

「フツー、キスの最中は、鼻から息をするか、タイミングをみながら、口をずらして……呼吸しないか?」

「……うるさいよ」

 そんな、やり方なんて、わたしは知らない。

「……もしかして、守屋。
 あんた、こんなキスも。
 ……はじめてだったとか?」

「……悪かったわね!」

 呆れたように、囁く紫音の声を振り払うように、力一杯、身体を紫音から引き離すと、わたしは、睨んだ。

 そして、そのまま。

 紫音の前から逃げようとした。

 どうせ、莫迦にして何か余計なことを、言うはずだから。

 今、そんなことなんて聞きたくなんてなかった。

 でも。

 逃げようとしたわたしの手を、紫音はつかむ。

「……待てよ!」

 ………!

 わたしは、もう一度、睨んだ。

 涙でぐしゃぐしゃになった目で。

 そんなわたしに紫音は、一瞬息を呑んで……囁いた。





「………悪かった」