「……な……!」

『何をするの!』と言う言葉を紡ぐ暇なんて、無かった。

 紫音は、わたしを抱きしめると、強引に……




 ……キスを………



 ………あぁぁっ………



 初めて、なのに。


 ファースト・キス


 ……だった……のに。



 こんな……こんなのって、ありえない……!

 友達みんなが体験したって言う、大人のキスをしてみたかった。

 だから、少女マンガみたいに初めてのキスは、ロマンチックな場所で。

 なんて、贅沢は言わない。

 けれど、せめて。

 わたしの好きなヒトに『好きだよ』って囁かれながら、キスをしたかった。

 いくら場所を選ばないとは言っても。

 よりにもよって、こんな、埃っぽい場所で。

 わたしのコトを好きじゃないヒトに。

 お金の代わりみたいに、無理やりされるなんて………!

「……い……や……!」

 わたしが紫音の胸を、両手で押しても、ぽかぽか叩いても。

 紫音は、もう止まらなかった。

 強い光を放つ瞳をそっと細めると。



 そのまま、わたしの口に、口づけた。