「あと百万円なんて!
 そんなの……」

 無理よ! とつなげようとしたわたしの言葉を、紫音は、意地悪く制した。

「まだ、話はある。
 質問は、全部終わってから受け付ける」

 紫音の瞳が、不穏な輝きを増した。

「あと百万円。
 守屋がどう作ってきても構わないが、絶対条件がある。
 絶対、ウリをしない事。
 ……当然だろう?
 今の時点で、守屋の身体は、オレのモノなんだから。
 オレ以外の誰かに身体を触らせて、金を作ることは絶対に認めない」

 もし守らなかったら、殺してやる……!

 そう言われかねないほどの、強い光を湛えた瞳に怯えて、わたしはがくがくと頷いた。

 そして。

 わたしがうなづくのを見て満足したのか、紫音は、ふっと、射抜くような瞳の力を少し弱めた。

「そうそう。
 親に出して貰うのも手だが、やめておいた方がいいぜ?
 なにしろ額が、額だ。
 事情も聞かずに、ぽんと百万出してくれる奴はそうそういないだろう?
 あんたがウリをしようとした事が、バレたくなかったら。
 黙っていた方がいい」

「……そんなの!
 わたしが、親に事情を話したら。
 自分がホストの仕事をやっているコトがバレて困るんでしょう?」

 わたしのささやかな反撃を、紫音は嘲った。

「オレの方は、別にホストだって、バレても良いんだよ」