「オレに抱かれているのが……泣くほど……嫌か……?」

「……ん……」

 紫音のことは。

 村崎先生のことは、嫌いじゃない。

 だけど。

 自分の立場を良いように勘違いして、舞い上がるのは、もう、絶対嫌だった。

 夢から覚めれば。

 悲しいだけだから。

 ……恥ずかしい、だけだから。



 わたしの答えに、紫音は、そっとため息をついて言った。

「……そんなに嫌ならば。
 ……解放してやるよ……
 『マク』を含めた、守屋の身体を、守屋自身に、売ってやる。
 そしたらオレも……客じゃなくなるから、あんたは、自由だ」

「……本当!?」

 わたしの声に、紫音の眉間にかすかに皺が寄った。

 思わずあげた、わたしの嬉しそうな声が嫌だったみたいで、彼は不機嫌な声を出した。

「……ただし」

 そして紫音は、すぃ、と目を細めた。

「あんたの身体の値段は……二百万、だ」

「……え?」

 なに!? なにそれ!

 先生が言ったこと。

 それは。

 紫音から貰った百万円。

 それを返しても、あと百万円出さないと。

 ……こんな関係が終り、にならないって言う事だった。