ぱ……たたたっ……


 ……涙が出てきた。

 悲しい心から溢れる水滴は、小さく小さく床を濡らす。

 それは。

 柴田と宮下先生が仲良く部屋を出て行っても、涙は止まらなかった。




 ぱ……た……



 その中の一粒が、村崎先生の手にかかって。

 わたしを抱きしめる先生の手が緩んだ。




 と、思った瞬間。



 先生は、乱暴にわたしの肩をつかむと。

 ぐぃ、とばかりに。

 自分の方に、わたしの顔を向けた。



 ……その瞳は、黒かったけれども。

 ……村崎先生の瞳じゃなかった。

 紫音が。

 紫音の瞳が。

 怒りとも、悲しみともとれるような光を、たたえ。

 ただ。

 込み上げてくる紫音自身の負の感情を映しているようだった。

「……あんたは……!
 守屋は、それほどまでに、嫌い……か……?」

「……え……?」

 苦く。

 かみ締めるように聞く、紫音の質問に、私は、思わず聞き返した。