隣の部屋は、急に静かになった。

 柴田……宮下先生に、抱きしめてもらったのかな?

 そ、それとも。

 ……キスを……しているのかな……?

 ……って、想像したら、冷めかけた顔のほてりがぶり返す。



 ……はぁ……



 思わずついた、小さなため息を。

 わたしを背中から抱いている、村崎先生は聞き逃さなかった。

「守屋も、宮下のことが……好きだったのか……?」

「……違うわよっ!」

 耳元で囁かれる言葉に、小声で即答して、頬を膨らます。

 柴田とわたしは、隣り合った部屋で、それぞれ同じ『社会科の先生』と一緒にいるのに……

 立場が全く違うことが悲しかった……んだ。




 わたし。

 宮下先生でなく。

 加藤先輩でもなく。

 村崎先生のことが……好き。

 だから。

 だからこそ……こんな……

 お金で買われて『オレのモノ』と言われることが……

 こんな風に抱きしめてもらうことが。




 すごく。

 ……すごく嫌だってコトに気がついたんだ。