「……それで、話って、何かな?」

 柔らかい、男の人の声がした。

 入ってきた一人は、地理を担当している宮下先生みたいだった。

 ウチの学校の先生の中では、一番若くて。

 今人気のあの、タレントによく似ている。

 女子生徒の中では、一番人気のある先生だった。

「……えっと……その……」

 かすれるように話すもう一人のその声に、聞き覚えは大ありだった。

 わたしは思わず目を見開いた。

 ……柴田……っ!

 思わず、出しそうになる声を飲み込んだ。

 柴田は、確か、放課後すぐ。

 好きな先生に、告白しに行くって言ってたよね?


 ……やだ……っ!

 わたし、もしかして。

 柴田の告白の場面に、居合わせちゃった……とか?



 わたしが、すぐ側に居るのを知らずに、柴田は、話す。


「……あたし……
 先生の事が……

 ……好きなんです!」


 ……言った……!


 がたたたっ!




 柴田が、告白したとたん。

 突然、色々なものをひっくり返したような、凄まじい音がした。

「み……宮下先生!
 大丈夫ですか?」

 どうやら、宮下先生が『音』の正体みたいだ。

 柴田に告白されて、動揺しているらしい。