「今何時だと思っているんだ!
 こんなに遅くまで!!」

 ……父さんは、アタマごなしに怒鳴る。

「遅いって、まだ九時前……」

「ウチの門限は、塾がある日でも、七時のはずだ!」

 過保護も過ぎると……すごい横暴だ。

 コレがあるから……私は、何も出来ない。

 何かの部活に入るコトも。

 サッカー部のマネージャーになるコトも。

 合宿とかで泊まると言ったら、一緒について来かねないほどに……わたしを監視する。

 いつだって。

 わたしは、もう少し、自由になりたかったのに。

 こんな風に、がんじがらめにわたしを縛る父さんは。



 ……世界で一番嫌いだ。




「今まで、どこをほっつき歩いていたんだ!」

 ……正直に。

 正直に、街でウリに出てた……なんて言ったら。

 ……パッタリ倒れてしまうかもしれない。

 何も話せなくて黙っていると、父さんは、わたしの肩をガシッとつかんだ。

「春陽っ!」

「そこの本屋で参考書を選んでましたよ?
 それはもう、真剣に。
 しかし。
 確かにもう遅いので、たまたま居合わせた私が、家まで送るつもりでした」

 絶対絶命の会話に。

 穏やかな。

 ともすると、のんきそうにも聞こえる声が割って入った。

「誰だ、お前は?」

 紫音!

 紫音がまた……助けてくれたんだ!

 ……でも……!