「……薫ちゃん……」

「これからは、あたしも、自分の力で歩いていかなくちゃ、いけない……
 そう考えて、もう一度、自分自身がやりたいコトを見つめ直した結果が、これなんだわ……」

 そう言って、薫ちゃんは、今までで、一番イイ顔をした。

「あたし、もう一度、医師になるわ。
 罪は償ったとはいえ、日本でもう一度免許を取るのは難しいけれど。
 海外で勉強して。
 あたしが働いてもイイって場所で、頑張ってみるから」



 ……そうだね。

 薫ちゃん。

 ダーク・クラウンのホールを滑るように歩く。

 黒いドレスを着た、女王様みたいな薫ちゃんも魅力的だったけど。

 白衣をまとって、病人やケガ人を助けてまわる薫ちゃんは。



 きっと。



 ……もっとステキに違いない。


「それで、春陽ちゃんは、どうするの?」

 薫ちゃんに聞かれて、わたしは、やっと微笑むコトが出来た。

「わたし……?
 わたしは……」

 あの日からずっとつけている、紫音の雫の首飾りを、服の上から触りながら、わたしは答えた。