「なななな……何ってべ、別に……」

 ホールの照明でも、紫がかった不思議な色に見える瞳に驚いて、言葉が詰まる。

 わたしの様子に、紫音は、ため息をついて、肩をすくめた。

「……行くぞ」

「は、はいっ!」

 紫音に、引っ張られるようにして、ホールから出て行く時。

 紫音とキスをしていたお姉さんを一瞬、見かけた。

 彼女は。

 満足そうに微笑んでいた。

 豪華な席で、薫ちゃんや、他のキレイなホスト達に囲まれて。





 ……でも。





 時折、紫音の姿をちらちらと目で追っているのが見えた。

 悲しそうに。

 それは、まるで。

 飼い主に置いていかれてしまった、子犬のように……

 そして。

 紫音の側にいた、わたしと目が合ったとたん。

 その、悲しげだった目が、急に険しくなった。

 わたしが。

 わたしみたいなのが、紫音といるのが気に食わないんだ……ね。

 ……あたりまえ、か。

 ごめんなさいっ……!

 わたし、紫音と、何の関係もないから……許して、ね?