柴田が離した手首から。

 今度は、熱が一気に、逃げてゆくのが判る。

 ヘンに疼いていた熱だけじゃない。

 カラダ中の、生きてゆく為に必要な熱さえも。

 全て奪われてしまいそうなほどの、ものすごい、寒さだった。

「柴田……寒い……よ……」

 あまりの寒さで、歯が鳴った。

 声が、震えた。

「は、春陽!?」

 柴田が、慌てて、わたしの肩を抱いてくれた。




 ……だけども。




 今度は、ちっとも気持ち良くも暖かくもならなくて……。

「柴田……気持ち悪い……」

 ……吐きそう……

 息が詰まって、苦し………………




 ……寒さは……




 わたしの視力さえも奪っていくようだった。


 目を開いているはずなのに、見える世界が急に狭くなってゆく。






 コワいよ……!

 寒いよ…………!
 苦しい……よ………


 助け……て………

 誰か……


 誰か………!



 …………紫音…………




 震えてやまないほどの

 怖さと。

 寒さと。

 苦しさが、わたしのカラダを突き抜けて。




 わたしの意識は……とうとう凍ってしまった。