「で……でも、万が一ってコト、あるしっ!」

 わたしは、加藤先輩の手を握らんばかりに、身を乗り出した。

「あんなに苦しそうな紫音……も、見たくない……」

 ……うん。

 見たく……ない。

 紫音はきっと、昨日みたいな失敗は、しない。

 ……だけど、あれは、もう……やだ。

「……わかったよ。
 しかたねぇな……」

 わたしの真剣さが通じたのか。

 加藤先輩は、しぶしぶ言った。

「ぜってー、ムダになるのが判ってて。
 やるのは、すげーもったいねぇけど、一つだったら、やるよ」

 加藤先輩は、胸ポケットから、薬の入っている小さな透明の袋を取り出して。

 素早くわたしの胸ポケットに押し込んだ。

「……ぜってー、先公には、見つかるなよ?」

「うん、ありがと!
 絶対、見つからないようにする!
 ……でも、薬、三箱分にしては、すごく小さい薬が一つ、なんだね?
 わたしは、粉薬かと思った」

 わたしが言うと、先輩は目を細めた。

「……たぶん、それ、売人の薬だよ……」

「……え?
 たぶん………?」