「………で?
 何の用だよ?
 正直、俺はもう、守屋とは関わりたくないんだぜ……?
 これ以上、紫音さんを、怒らせたくねぇからな……」

 休み時間に、加藤先輩を、人気の無い裏庭に呼び出すと。

 先輩は、不機嫌そうに現れてそう言った。

「紫音……さん?」

「おお。
 ソンケーしてんだよ。
 アコガレてんだよ。
 悪りぃかよ?
 あのヒト、村崎ん時は知らなかったケド、すげーよ。
 カリスマ・ホストって言われるのも、納得のテク持ってるし。
 守屋がいた時には、厳しいコト言ってたケド。
 今は、結局、散々世話になってるんだ」

「それで、その……目、なの?」

 わたしに言われて、先輩は、にやりと笑った。

「アレックスを知ってるのか?
 ……って、守屋は、紫音さんの女なんだから、当然か?」

 そう。

 さっき。

 授業中の教室から加藤先輩を見た。

 その時。

 天気が悪く、電灯をつけても暗い廊下を走る、先輩の瞳の色が、違って見えたんだ。

 まだ、完全な紫色には見えなかったけれど。

 これは、たしかにアレクサンド・ライトの瞳だ、と思った。