「だから……
 ……売人になったことは、後悔はしていない。
 もし、時間を巻き戻すことができたとしても。
 不正がバレて、医師免許を奪われ……何年か、刑務所に入ることが判っていても。
 俺は、同じことをしていたな」

「……刑務所……!?」

 驚いて叫ぶ、わたしに。

 薫ちゃんは、ため息をついた。

「……そうだよ?
 俺は、元……いや。
 医師免許もないのに、医療行為をしている今も………
 ……立派な犯罪者、だ」


「………!」

 驚いて、声もないわたしに。

 薫ちゃんは、闇より暗く微笑んだ。

「俺が……怖い……?
 ふふふ。
 当たり前だよな。
 もし、世界中の人間が正義か悪に分類出来るとしたら。
 俺は。
 確実に『悪』の側に立つ者だ。
 ……そして……
 紫音は、いつだって『正義』の……本来ならば、光の当たる場所にいるはずなのに………」

 薫ちゃんは、そっと、紫音の髪を撫でてつぶやいた。






「……俺が『闇』に叩き落としたんだ……」