「え……?」

 薫ちゃんの信じられない告白に。

 わたしの思考は、停止する。

「ヤ……薬の売人……って……?」

 わたしの質問に、薫ちゃんは、闇より暗い瞳を伏せた。

「そのまんま、だ。
 違法に薬を手に入れて。
 それを高値で、欲しいヤツに売り払う。
 金と、ヒトの健康とを情け容赦なく奪いさる………
 ……社会のダニだ」



「薫ちゃん……!」


「医師は。
 麻薬指定の薬でも、他の薬でも。
『処方箋』って言う紙を一枚書けば、簡単に手に入れるコトが出来るんだ。
 もちろん。
 自分の処方箋を自分で書くコトはできないから、少しはテクがいるけど。
 そんなごまかしなんて、俺にとっては簡単なコトだったよ」

 薫ちゃんは、嘲笑う。

「昼間は、医師の顔をしてヒトの健康を気遣っているクセに。
 夜には、何人を廃人に追い込んだか、判らない」

「……何で!
 何で、そんなヒドいコトを……!」



「ああ。
 金が欲しかったんだ」

 こんな、薫ちゃんを。

 今まで、一度も見たコトは無かったし。

 ……見たくも無かった。

 皮肉げに、頬を歪めて自分を嘲う、薫ちゃんの姿なんて……!