「……ねぇ。
 どういうコトなの?」

 紫音に、布団をかぶせている薫ちゃんの背中に、わたしは、聞いた。

「何も聞かないで?
 なんて言っても……」

「もちろん、ダメよ!
 絶対、ダメ!」

 わたしは、必死に叫んだ。

 ……こんなコト……

 何も、知らないワケには、絶対にいかない!!!

「紫音に、何がおきたの!?
 そして薫ちゃん。
 ……あなたは……ナニ!?」

 薫ちゃんは、振り返って、ため息をついた。

 ……諦めたように。







「……あたし。
 昔、医師だった時があったのよ」

「……うん」

「……それと、同じ頃……
 ……俺には、もう一つ『顔』があったんだ」

「……ホスト……?」




「……ちがう」


 言って、薫ちゃんは、暗い瞳をした。

 それは、今まで見たことがないほど……

 多分。

『死に神』なんて言うものがいるとしたら、こんな瞳をしているんじゃないか、と思えるほどの……

 ぞっとするほどに、暗い瞳がささやく。





「……俺は。
 薬(ヤク)の売人だったんだ」