呆然としているわたしを尻目に。

 薫ちゃんは慣れた手つきで、紫音の腕に、注射針を滑り込ませた。

 毒々しい。

 本当にヤバそうな液体が、紫音のカラダに、入る。

「……薫ちゃん……」

「大丈夫だって。
 そんな顔をしなくても。
 変な薬じゃないわ。
 ただのケイレン止めのフェノバー……って。
 ……見ててごらん?」

 ……確かに。

 言っているうちにも。

 紫音は、だいぶラクになって来たようだった。

 紫音は、深く、穏やかな眠りを取り戻して、ため息のような寝息をたてた。