薫ちゃんは、かっきり二十分で飛んで来た。

 急いているノックに、慌てて、扉を開けると。

 薫ちゃんが、入って来たんだ。

 いつも見慣れている黒のドレスじゃない。

 黒は黒でも、ちゃんと、ズボンをはいて……

 ……お医者さんみたいな白衣を着ている。

 しかも、ご丁寧にも。

 手には、お医者さんが往診に行く時に持つような、大きなかばんをさげていた。

「か、薫ちゃん……?
 その格好……!
 本当に、大変な時だって言うのに!
 コスプレ、とかって言ったら怒るわよ……!?」

「……まったく、だわね」

 びっくりしているわたしに、ちょっと笑って、薫ちゃんは、真剣な顔をした。

「……紫音は?」

「う、うん。
 こっち……!」

 紫音の寝ているベッドに案内すると。

 まるで。

 薫ちゃんは、本当のお医者さんみたいに、紫音の身体を診た。

 そして。

 様子が、よっぽど気に入らないのか「まったく、もう!」と呟いたとたん。

 手を洗ってから、持ってきたかばんの中身を探って、何かの準備を始めた。