この時わたしは。

 薫ちゃんを呼んで、何か変わるとは、ちっとも思っていなかった。

 ただ、不安で。

 怖くて。

 紫音の携帯を開くと、篠原の番号を夢中で押した。



 出て!



 お願い、薫ちゃん!



 ……早く出て!





 本当は。

 そんなに長い間待ってたワケじゃなかったのに。

 でも。

 五回目のコール音を死にそうな気分で聞いていた。


 早く……!


『なぁに、紫音ちゃん。
 今日は春陽ちゃんとデートで、クラウンお休みじゃなかったの?』

「か、薫ちゃん……!?」


 やった!

 つながった!


 八回目のコールで、やっとつながった!

 いつもと変わらない薫ちゃんの声に、涙が出そうになる。

「薫ちゃん~~!」

『あれ?
 えええっ!?
 春陽ちゃん……?
 どうしたの!?
 これ、紫音ちゃんの携帯からよね?
 どうしたの?
 何か、あったの……!?」

 薫ちゃんの声に、全部の力が、抜けそうになった。




 もう、大丈夫……!



 震える紫音の手を握りしめて、薫ちゃんに、今起きているコトをわたしは、一生懸命説明した。