加藤先輩は、真剣だった。

 肩で息をして叫ぶ、その声に、紫音は……




 ……ゲラゲラと笑って応えた。




「わかったよ。
 なんで薫がお前を入れたか、良くわかった。
 お前は……昔のオレに……薫も含めたオレ達に良く似ているんだ」

 笑い過ぎて出てきたらしい、涙を拭き拭き、紫音は、頷いた。

「……だったら、やってみろ。
 やれるモノならな?
 お前は未成年だし、一応オレの昼間の顔では『可愛い教え子』だが、手加減はしない。
 ホストの仕事は、甘くないぞ?
 生き馬の目を抜くサバイバルだ。
 それで良ければ、お前にチャンスをやろう」

「……村崎……」

 加藤先輩は。

 幾分、潤んでいるような目を拳でこすった。

「すまん……おんに、きせる」

「おんに……って、それを言うなら『恩に着る』だろ?
 まともに高校を出たかったら、もう少し真面目に国語の授業をうけろ。
 ……まあ、いい。
 ただし、バイトをするに当たって、条件が、いくつかある」

 紫音は、先輩を睨んだ。

「まず、接客中も、酒を呑むのは禁止。
 ふてぶてしさは百人前でも……一応、未成年だからな。
 それに。
 これから守屋に手を出したら、問答無用で、殺す」