「……それも、違う」

 加藤先輩は、紫音に近づいて言った。

「俺は、女と暮らしたいんだ。
 ……子供も一緒に」

 え……!

 加藤先輩の言葉に、紫音は、目を見開いた。

「俺の出来ることで、一番金の稼げるモノは、きっとこれだ。
 沢山稼いで生活費に入れたいんだよっ!」

 先輩の言葉に、紫音は、やれやれ、とため息をついた。

「それこそ、親父に泣きついて、なんとかして貰え。
 じゃなかったら、学校を辞めて、1日ばっちり働くんだな。
 ガキのバイトじゃ、たかがしれている。
 生活なんて、無理な話だ」

「親父に知れたら……女と別れろ、って言うに決まっている。
 それこそ、子供だっておろされる!
 そんなのは嫌だ!!
 絶対、嫌だ!
 それで、昨日、家を出たんだ!!!!」

 先輩は叫んだ。

「ガッコを辞めて働くことも考えたさ。
 だけど、今日び。
 高校中退のヤツがまともに稼げる職なんざ、ねぇ!
 だったら、あと半年ちょっと踏ん張れば、とりあえず、高校は卒業出来るんだよ!
 バイトは、その繋ぎだ!!」