「バイト……?」

 加藤先輩の言葉に、紫音の目が細くなった。

「ああ、薫が面接して、昨日から入るはずだったヤツって、お前だったのか?
 こんな野郎を見抜けねぇ、なんざ薫にしてはめずらしいな。
 お前には、個人的に言いたいコトは散々あるが、それ以前の問題だ。
 二十歳にもならねぇガキに、何ができる?
 もちろん、クビだ。
 さっさと帰れ」

 言って、追い出しにかかる紫音に、加藤先輩は、食い下がった。

 必死にとも見える表情(かお)で。

「待てよ!
 俺には金が要るんだ!」

「遊ぶ金が欲しければ、親父にでも泣きつくんだな。
 こっちは、迷惑だ」

「違う、そんなんじゃない!」

 加藤先輩は、棚から落ちた色々なものをかき分けて、立ち上がった。

「俺の女に、子供が出来たんだ!
 ……俺の子なんだ」

 先輩の言葉に、紫音の目が険しくなった。

「それは、おめでとう。
 自分の不始末の尻拭いの金が欲しいのか?
 子供をおろす金だったら尚更やれねぇな」