どんっ!

 がしゃ がしゃ がしゃ がしゃ!!

 先輩は、襟首を掴まれてわたしから強引に引き剥がされると。

 投げ飛ばされて、部屋の隅の戸棚に派手に当たって、やっと止まった。


 かんっ!


 追い討ちをかけるように、ローズヒップティの缶が、加藤先輩の頭を直撃すると。

 先輩は、その痛みに、頭を抱えて唸った。


「紫音!!」

 見れば。

 紫音が、立っていた。

 目に怒りを帯びた光を、輝やかせて。

「また、加藤か……?
 守屋は、オレの女だ。
 手を出したら、殺す」

 静かな。

 だけど、本当に殺気をはらんだか、と思うほど迫力のある声に。

 加藤先輩は小さく息を呑んで、ぶつぶつと呟くように言った。

「……くしょ……
 不意打ちとは、卑怯じゃねぇか!」

「卑怯だと?
 ヒトが寝ている枕元で、女を掠め取ろうとしようとしたヤツの言い草か?
 こんなところまで、何しに来た?
 え? 加藤」

「バイトだよ、くそったれ!」