「な……!
 守屋……!?
 守屋が、何だってこんな所に……?」

 加藤先輩は。

 如何にも「ホスト」の格好をしていた。

 けれども。

 さすがに慣れていないのか。

 学校で制服を着ている時は、大人っぽい感じがしていたのに……

 派手なスーツは、まるで似合っていなかった。

 ……紫音とは、真逆の変身をしてる。

 それでも。

 世の中の事を莫迦にしているような。

 拗ねたような雰囲気は健在で。

 わたしの顔を見るなり。

 偽りの丁寧さが吹き飛んで、控え室の中に、ずかずか入って来た。

「なんだ。
 守屋もここでバイトか?
 二十歳以下は、ダーク・クラウンではバイトも入れないって聞いていたから。
 色々偽装したり、気合い入れてきたのに。
 本当は結構、ここ、いいかげんじゃね?」

「わたしは、別にバイトじゃ……」

「じゃ、なんだって言うんだよ。
 俺は、バイトだぜ?」

 加藤先輩は嘲った。

「三年は、サッカー部も引退だし。
 俺は、街で一番っつう、このダーク・クラウンで腕試しに来たんだ。
 一番人気のカリスマ・ホストってヤツの顔も拝んでみたかったしな」