「それにしても。
 春陽のラブラブの相手が「あの」村崎だなんて、ねぇ」

 昼休み。

 柴田が、玉子焼きを食べながらしみじみと言った。

 わたし達は、校庭の裏庭で、弁当を広げていた。

 ここだと、誰もいないし、よく手入れされた花壇は見えるし。

 なによりも。

 秘密の話をしながらご飯を食べるのに、ぴったりだったから。

「もう、春陽が良いなら何も問題ないんだけどさ。
 あれ、のドコがキレイで、コワいんだか……」

 やっぱり、良くわからないや、と柴田は、笑って、首を振った。

「そうねぇ」

 柴田にも、村崎先生が実は、ホストって言うことは内緒だ。

 今日、廊下ですれ違った時も、先生は。

 相変わらず、ネルのシャツにジーパンで。

 いるんだか、居ないんだかよくわからない雰囲気を身にまとって廊下をうろうろしてたっけ。

 あれでは、どうやったって紫音を想像することなんて、無理だ。

「でも、さぁ」

 柴田が、箸をおいて、ふう、とため息をついた。

「お互い、両思いになれてよかったけれど……寂しいね。
 ……ちょっとだけ」