しどろもどろな、わたしに、薫ちゃんは、優しく微笑んだ。

「そう。
 良かったわ……
 紫音ちゃんが、あなたを見つめてくれるのなら。
 少しは、お薬の量が減るかも知れないわ。
 ちょっぴり寂しいけど、あたし、とっても嬉しいわ……」

 薫ちゃんは、静かに目を閉じた。

「……これで、春陽ちゃんもバイトしなくて済むわね?
 紫音ちゃんも、これから一時間以上は目を覚まさないし……
 ……春陽ちゃん、今日は帰る?」

「あの……出来れば……紫音の目が覚めるまで、ここにいても良いかな?」

 やっぱり。

 あの、倒れるように眠った紫音の事が心配で。

 このまま、はい、さよならって帰る訳には行かなかったから。

 わたしの申し出に、薫ちゃんは、すごく嬉しそうに、場所を開けてくれた。

「じゃあ、じゃあ。
 この控え室と、そっちの仮眠室。
 もともとあたしと、紫音ちゃんしか入らない場所だから、このままいて良いわ。
 お茶とお菓子の用意をしておくわね?」

 ぱたぱたと、準備が終わると。

 薫ちゃんは、ごつい手で、わたしの手をそっと、とって言った。






「紫音ちゃんを……よろしく……ね?」