私は一口コーヒーをすすった。

ほどよく冷めたコーヒーが口の中に広がり、コーヒーのほろ苦い香りが鼻にぬける。

ブラックコーヒーは苦手だったが、先生が好むので私も飲むようになった。


コーヒーの香りを逃がすように鼻でため息をついた。


「毎日来るのは、やはり迷惑でしょうか」


「いや、とんでもない。生徒が私の研究室を訪ねに来てくれるのは嬉しいことだよ。もちろん」



最後の「もちろん」は念を押すように、なんだか重みのある静かな言い方をした。