『うさぎの涙』は相田監督の作品のなかで1番のベストセラーだった。



私もお姉ちゃんに勧められて、中学生の時に読んだことがある。



読んでいくうちに、自然と涙があふれていた。



遠藤礼子は、お姉ちゃんに雰囲気が似ている。



優しい笑顔でみんなを包むところや、無邪気で少し子供っぽいところとか。



お姉ちゃんをイメージしながら、遠藤礼子を演じてみようと思った。





この映画の話をお姉ちゃんに、電話で報告した。



「おめでとう。私、いつ死ぬかわからないけど、絶対『うさぎの涙』を見るから。それまでは、生きてる。だから、お互いに頑張ろう。」




受話器の奥から聞こえてくる、細々としたお姉ちゃんの声。


「うん。」



大きくうなずいた。



私たちは、約束を交わした。



お姉ちゃんは、『うさぎの涙』を見るまで生きる。
私は、全力で撮影を頑張る。