今、確かに『夏川杏子』と呼ばれた。
周りの人々からは、拍手をしてくれて、監督から「おめでとう」と花束をもらった。
私の瞳からは、涙が一筋流れた。
嬉しい。
今の心境はただ『嬉しい』という感情だけだ。
―――この時、天才女優 夏川杏子が誕生した。
結果発表が終わり、携帯を取り出して、すぐにお姉ちゃんに電話した。
「杏子すごいね。新島芽瑠を抑えて、合格するなんて本当にすごい。私の目にくるいはなかった。家に帰ったら、パーティーだね。」
すごい喜んでくれた。
家に帰ると、お父さんとお母さんとお姉ちゃんがクラッカーで出迎えてくれた。
この日の夜は、興奮して寝ることができなかった。