「あーあ、無理しちゃって。」



「…ずびばぜん。」



うるうると瞳に涙を溜め、右手で口元を押さえる先生の背中を優しく擦ってやれば、素直に礼を言ってくれる。



「水飲む?」



「……あい。」



キャップを開け、ペットボトルを手渡してやれば、そこがアスファルトだってことも気にすることなく、その場に座り込み、ゆっくりと水を飲んでる。



「スーツ。」



「へ?」



「スーツ、汚れるよ?」



「はっ!…うぷっ。」



「あー…はいはい。」



真面目で素直。おまけにどこか抜けてる。



あー…咲緒がこの人を好きになった理由が、なんとなく分かった気がする。