普通だったら、何でラルの側に

居てやらないんだろう、と思う。


でも、この人を見てると

その考えは無意味に等しかった。


仕事に行かなければならない、

とは言っているものの、

ラルのことを心から心配しているんだと

この人の周りに漂う

雰囲気で分かったからだ。


だから、俺は言った。


「安心してください。ラルが起きて

落ち着くまで、俺は病院に居ます。」

安心して。

安心して、ラルを任せてほしい、と。


「…………ありがとう。でも…

サクト君の…お家の事情は大丈夫?」


「はい。

親はどっちも海外に居ますから。

俺は1人暮らし同然なので、

平気です。」


「…………そうなの?」


「はい。」


「…………じゃあ…ごめんなさい、

ラルを…お願いします。」

その人は深々と頭を下げた。

相手は俺みたいなただの高校生なのに。


「また今度、うちに来てね。」

顔を上げ、最後に笑って。

その人は、病院を後にした。