君が寝息をたてる。

更に速度を落とした私の車。

疲れてるの、知ってるんだよ。眠たいのだって、解ってる。それでも、一緒にいたいから、君からの誘いは断れない。

断ってあげられたら、君はゆっくり眠れるのにね。




「着いたよ?」

「……んぅ」


本当は、5分は前に着いてたんだけど。


「着きましたよー!」

「…んー…」


君の寝顔を眺めてたんだよ。


「布団で寝なさーい!」

「っ……あ、寝てた?」


肩を激しく揺すると、ビクッとしたように体を跳ねさせ、目を開けた君。


「うん、確実に。」

「いや、実は起きてたよ。寝たふりしてただけ。」


嘘だね。

もう何分も前に着いてるんだから。


「そうですか。何のために?…ってか、寝てたよね。」

「うん。寝てたな。」

「とにかく、疲れてるんだから、早く布団で寝なさい!」

「えー…眠たくない。」

「はい、嘘つきー。…早く寝た方がいいよ?」

「んー、じゃあ帰る。」


そう言って、こちらに向かって両腕を広げる君。

慣れって凄いと思う。

初めは戸惑った君からの“ばいばい”のハグにも、即座に対応出来るようになった私。

直ぐさま、抱きしめかえした。


「はい。おやすみ。」

「おやすみ。…着いたらメールして?」


君は体を離しながら、いつもの台詞。


「すぐ寝る癖に。どうせ返事返ってこないもん。」


五割。いいや、七割は返ってこないって解ってる。

「今日は返す!」

「じゃあね!」

「じゃー!」


この瞬間は毎度、切ない。