カルサからそんなことを言われるとは思いもよらず、今の恐怖を忘れてしまった。

カルサの後頭部を見つめたまま次の言葉を待つ。

「今ここにいるのは雷神としての俺だ。これから向かう場所でも雷神として名乗る。」

「はい。」

「つまり今からの俺はシードゥルサ国の王ではない。だから言葉遣いを変えて貰えないか。」

「はい。えっ!?」

今言われたことが素直に受け止められず、リュナは驚きの声と共に掴んでいた服をおもいっきり引っ張ってしまった。

予想以上の強い力にカルサは体勢を崩して転けそうになる。

「きゃっ!申し訳ありません、陛下!」

カルサは何も言わずリュナの顔を睨むように見つめた。

「言葉遣い。」

どうやら怒ってはいないらしい。

しかしリュナは突然の申し出に頭が真っ白になっている。

「国も何も背負っていない奴に敬語を使う理由はないだろう。」

「そんな…。」

「年もそんなに変わらないだろうし。」