リュナがカルサの服を掴んでいる。

歩き出したばかりの二人の足が止まった。

「す、すみません、陛下。」

俯いたままの声は少し震えていた。

声だけじゃない、服を掴んだ手も震えている。

不思議に思ったカルサが顔を覗きこむと、リュナの顔色が悪いことに気が付いた。

「どうした?」

「あ、の…。」

結論が言いだせず、リュナは焦りながら話し始めた。

意味が分からず、カルサは頷きながら次の言葉を待つ。

「すみません、目が回ってしまって。」

どうやら上も下もない、足場もない宙に浮いたままの状態に気持ちが悪くなったらしい。

リュナは目を開けることが出来なくなっているようだ。

「おい、大丈夫か?」

大丈夫だと言いたいところだが、この手を離す勇気はない。

よりいっそう強く服を握りしめてリュナは震える息を吐いた。

強がっても仕方ない。