「行ってこい、無事に帰ってこいよ!」

「ああ、勿論だ。」

もう一度固い握手を交わし、カルサは部屋を出た。

いつもの様にサルスはその後ろ姿を見送る。

しかしその瞳は今までとは違っていた。

前を向いて進んでいくカルサも、それは同じだった。

「カルサ!」

中庭に面する廊下を歩いていると、階下からカルサを呼ぶ声がした。

「聖?」

下を覗くと聖が立っている。

花壇の花に囲まれた、実に愛らしい場所にしかめっ面は浮いて仕方ない。

「お前にしては珍しい所にいるな、花に囲まれてどうした聖。いつ帰ってきてたんだ?」

「さっきや阿呆。自分探してたんや。皆がこっちの方に叫びながら歩いて行った言うもんやから、見張っとったんや。」

沢山の花に聖は確かに異色な組み合わせではあった。

カルサを見上げる聖は腰に手を当て、気にするところはそこじゃないと呆れた声を出す。

「そうか、今行く。」