ついでにと貴未は振り向いてもう一度兵士に声をかけた。

「へっ!陛下で、いらっしゃい…ますか!?」

返事をする声が見事にひっくり返り貴未は思わず半目になる。

明らかに動揺を見せて馬番の兵士は身体を震わせていた。

その姿を見ただけで今の自分の言動が意味のないものだと痛感する。

「あーごめん。…だよな。」

知る訳ないよな、そう呟いてまた前へ歩き始めた。

そうだ、城門にいる兵士が国王の予定を把握している筈がない。

彼らを馬鹿にしている訳ではないが、冷静に考えてそうだったと貴未は頭を掻いた。

きっちり把握しているのは国王の側近であるナータックと秘書官のサルスパペルトくらいだろう。

いやいや、こっそり目を盗んで予定を変えていたり城を抜け出している時もある。

そうなるとサルスでさえ少し怪しいかもなと頭の中でさらに話を進めて貴未は唸った。

そんな彼の後を追うように直轄部隊の兵士が小走りで背中に付いてくる。

「さて、どうしようかな。」