その言葉に千羅も表情を曇らせる。

吐き捨てられたその言葉にどんな思いがあるか、カルサの内側を千羅は痛いほど知っていた。

呟いたカルサの目がどれだけ冷たくなっているかも知っている。

だがあえて千羅は明るくカルサに切り返した。

「そりゃ皇子一人の話でしょ。風神と二人で行くんだからデートでいいじゃないですか。頭固すぎるのでは?」

「うるさい。持ち場へ戻れ。」

千羅の切り返しにカルサも乗ってきた。

「はい、皇子。」

またからかうような声にカルサは片眉を上げる。

小さくため息を吐くと一度沈んだ気持ちを回復させてまたサルスのもとへ向かい始めた。

ホッとしたのは千羅の方だ。

千羅は少しずつリュナの存在の有り難さを感じていた。

彼女がいることでどれだけカルサが感情を出すようになったことか。

しかしリュナはそんな事知らない。

千羅、瑛琳の存在さえ未だ彼女は知らないのだから。

千羅はカルサの後ろ姿を見送り、静かに姿を消した。