わざとらしく咳払いをしてカルサは立ち上がる。

「サルスの所に行ってくる。とにかく、早ければ明日からだから用意しておくように。」

「はい!」

くもった声のリュナを置いてカルサは足早に会議室から出ていった。

「やっちゃった…。」

膝から崩れ落ちてうなだれるリュナの声が微かに耳に届く。

「勘弁してくれ。」

閉めた扉にもたれながら呟いて手を額にあてた。

慣れていないのだ。

裏のない言葉を受けるのは新鮮すぎて、いまだに慣れずにいる。

思い出されるのは嬉しそうな顔をしたリュナの姿。

それで自分の表情が緩むなんて誰が想像しただろうか。

いま自分が微笑んでいることにカルサは気付いていた。

しかし、それもすぐに苦い表情に変化してしまう。

それを機にサルスを目指して歩き始めた。