まるで逃げているようだと分かっていても、向き合ったままではいられなかった。

だって鼓動が速い。

「はいっ!」

広い背中に飛び付きたい衝動を抑え、リュナは元気よく返事をして歩き出した。

嬉しくて笑みが止まらない。

そんな彼女の様子をカルサは背中で感じていた。

複雑な構造を難なく歩いて来た道を戻っていく。

小さめの会議室に着く頃には、お互いに気持ちも落ち着いていた。

「入れ。」

「はい。」

扉を開けたカルサに促され、リュナが先に部屋に入る。

部屋の中にあった長机を囲む椅子の一つにカルサは座った。

リュナは立ったままカルサの様子を伺う。

机に投げ出した手を見ているようで見ていない、カルサは何か考えているようだった。

「さっきナルの部屋で話したこと、何の相談もせずに宣言して悪かった。」

話し出してもカルサの目は手の先を見ているようだ。