まるで大きなことの前置きのような言い方に瑛琳は少し嫌な予感がして口を紡ぐ。

しかし気になる気持ちが強かったのだろう、少し間をおいてナルにその意味を問うことにした。

「あと一つとは何でしょうか。」

「…私の命が尽きることよ。」

自分の命が尽きる、自分の命に関わる事は占えないというのが占者が交わす契約の一つだった。

その可能性さえ無ではない。

瑛琳が息を飲んだのが分かったがナルはそのまま言葉を続けた。

「何が起こるか分からないわ…運命の歯車はいつ狂うか分からない。歯車自身に何か影響が出ているのかもしれないわね。」

「歯車自身?」

瑛琳の問いかけにナルは静かに微笑むだけで、すっと遠い場所に思いを馳せるように顔を上げた。

空を仰ぎ一言呟く、それはこれからの事を暗示させるかのように深く瑛琳の心に刻み込まれた。

「私は知りすぎたのかもしれないわね…。」

ナルが自身の行く末を思う頃、カルサの私室で動きが見えた。