人気のない城内がさらに気持ちを沈ませたのかもしれない。

「ナル様。」

後ろ手に閉めたナルの自室の扉の音がやけに響いたのは気のせいか、部屋の中央まで進んだ時に上空から声がかかった。

その声に聞き覚えがある、瑛琳だ。

「見えない、とはどういう意味を示していますか?」

「聞いていたの、瑛琳。」

「はい。見えないという事に、いくつか原因が伺えます…。」

あくまで姿は現さずに瑛琳はナルに答えを求めた。

ナルは両手をお腹の前で祈るように組み、どこかにいる瑛琳を想定して空間と会話をする。

「相手の力が私より強い、相手が私が見れる限界を超えた存在である、もしくは私が望んでいない…。」

どれも有り得る事なのだとナルは言葉を続けた。

それが考えられる原因であり、予想もしなかった出来事の未来を見るのが少し恐くなっている。

自分が心のどこかで望んでいない事が反映されているのかもしれないとナルは情けなさそうに呟いた。

「…人間ですから。」

「そうね。でも可能性として、あと一つ挙げられるわ。」