「でもサルス…本当の戦いはここからよ。もう私には占えない。」

「ナル?」

ナルはふいに両手を前に出し水晶玉を召喚した。

サルスには透き通った水晶玉にしか見えないが、それを見るナルの表情は悲しくも険しい。

彼女の目には黒い煙が光を包み殺してしまう映像しか見えていなかった。

「闇が光を覆う。でもかすかな光が生きている。私にはここまでしか見えない。」

それがどういう意味を為すのかサルスには分からない、しかし言葉そのものとナルの表情から難しい方向へ道は続いていることが感じられた。

やっと抜け出せた困難の先にもまだ何か苦難が待ち構えているというのか。

ナルは水晶玉を消すと、まだ眠りから覚めない二人の顔を見つめた。

「呪縛の効力は消えている。もう心配はないと思うわ、後は任せます。」

しわの深い手でリュナの頬を撫で、サルスに一言残してナルは部屋を後にした。

高貴な布の擦れる音が静かな部屋に響きやがて扉の向こう側へと消えていく。

一人自室に向かうナルの表情はどこか思い詰めたようにも見えた。