「…起きた。」

日向が呟いた通り、そこにカルサが立っていたのだ。

虚ろな目、感情を表さない表情、そして何より雷を身にまとい立つ姿は異色な存在感を出している。

やがて彼は風に流されるようにゆっくりと、少し頼りない足取りで歩き始めた。

ふわりふわりとどこかへ飛んでいきそうなくらいに彼の色は薄い。

「カルサ!」

誰が叫んだのか、彼の名前が大きく響いた。

声に反応を示したカルサが振り向く、おそらく彼の目に映ったのは懐かしい見慣れた面々だろう。

声を出そうとしたのか口を開いたものの、カルサは地面に吸い込まれるように倒れていった。

「皇子!」

真っ先に反応した千羅は夢中で駆けつけ、祭壇から落ちていくカルサを受け止める。

「千羅!」

瑛琳の呼ぶ声が聞こえた。

しっかりとカルサの身体を支える。

確かに聞こえる鼓動と寝息、戻ってきたのだと千羅はその腕の中の存在に心が震えた。