身体をゆっくり起こし辺りを見回してみて分かった、ここは確実にヒの国ではない。

肌で感じる空気が全く違うのだ。

そう認識したあと再び気持ちはさっき見た夢の分析に移した。

あれは何だったのだろうか。

無くしていた記憶の断片のか。

しかし相変わらず分からない事だらけの自分しかここにはいない。

昔から確かな記憶は一つしかなかった。

自分の名前は日向。

「日向!」

声がした方向を見ると日向を心配して駆け付けてくる瑛琳がいた。

よく見るとここは中庭の様で薄暗い空にはガラスが隔てられている。

「良かった、はぐれたかと思ったわ。怪我は?」

「え?うん、大丈夫。千羅は?」

「無事よ、向こうで待ってるわ。」

そう言いながら差し出された瑛琳の手を掴むと日向は立ち上がった。

「空、曇ってるね。」

「えっ?」

日向の言葉に瑛琳は上を見上げた。