「ここがシードゥルサへの界の扉だ。」

この世に存在する世界の数だけ作られた界の扉、それらが集まった界の扉の間に彼らはいた。

大事そうに両腕にリュナを抱え、祈るような気持ちでいっぱいの千羅。

彼を先頭に日向、瑛琳と続く。

「便利、なんだよね?」

界の扉の仕組みを聞いた日向が呟いた。

いま自分が立つ場所に不思議と違和感はあまり持たなかったらしい。

他人とは違う自分を今まで隠すことが当たり前だった、しかし自分が普通でいられる空間がまさにここなのだ。

おそらくこんな不思議に囲まれた世界が自分の居場所なのだろう。

「便利よ。」

柔らかく笑う瑛琳が子供をあやすように答えた。

途端に日向は恥ずかしくなり、自分から聞いたくせに情けなくなったのだ。

そんな日向から改めて視線を扉に移すと瑛琳は震える息を吐いた。

面持ちもどこか緊張が隠せない。

「恐いわね…千羅。」

「ああ。」

珍しく弱気な発言をした瑛琳だったが、問いかけられた千羅も同意の声をもらした。