それを思い出さないように自分で自分を制御しているのだろうか。

「それか、気付いて黙ってるか。」

有り得ることかもしれない、同意の声をもらすと紅は静かに口を閉じた。

あのリュナなら有り得ることかもしれない。

全てを悟って皆の気持ちに合わせてくれているのかもしれない。

そして部屋で一人で泣いているのかもしれない。

そう考えるとさっきまでの自分の考えがあまりにも失礼な気がして紅は居心地が悪くなった。

「千羅と瑛琳から連絡は?」

貴未の質問に紅は首を横に振るだけだった。

もちろん、貴未の所にも連絡はない。

ただ一度だけ、一人でカルサの番をしていた時に千羅がやってきた。

その時はまだ何も見付からず、焦っていたようだった。

必ず鍵を探してみせると、カルサと貴未に誓いそれまで待っていてくれと告げて出て行ったのだ。

あれからもう、どれほどの時が流れたのだろうか。

不安を通り越して希望さえ失いそうな時間が流れたような気がする。