あやかしの魔法を使っても姿を変えているレプリカとは違う、サルスは封印を解いたのだと言った。

これが彼の本来の姿ならどうすればいいのだろう。

レプリカはいたたまれず拳を握った。

少しでも強く触れようなら儚く砕け散ってしまいそう、今のサルスは精巧なガラス細工のように優しくしないといけない気がする。

この人もずっとカルサと同じ様に孤独に戦い続けていたのだ、レプリカは彼に触れたくて仕方がなかった。

「私は…リュナ様の居場所を守る為にここに居るのです。」

サルスの手に触れ、そこに自身の額を当てる。

「私は…貴方の居場所を取り戻す為にここに居るのです。」

祈るように小さく叫ぶレプリカの声はサルスには届いていない。

この偽りの風神の正体、サルス以外は誰も真実を知らなかった。

紅も貴未も聖も、サルスやレプリカの口からはこの事実を告げられていない。

「やっぱおかしいと思うんや。何となく違和感あんねん、あのリュナ。」

未だカルサが封印されている祭壇の間で紅は呟いた。

その声にラファルから聖水を受け取った貴未が答える。