いつ何があるか分からないなら備えは必要なのだ。

レプリカはリュナと城で再会した時から極力行動を共にしないように努めていた。

共にしなくとも互いの居場所や行動は把握している、そういう関係を作り上げ周囲にもそう感じさせていた。

今ここにリュナとして存在していても、レプリカはいないのかと疑われるようなことはない。

別の仕事をしていると言えばそんな疑問はすぐに解決出来るのだ。

この根回しが役に立つ日がくることは好ましくなかったが、今は備えに安堵していた。

これでリュナも自分も居場所を守ることができる。

しかしサルスはどうなるのだろう。

そこまで考えるとレプリカは目の前で休むサルスを見つめた。

そして目を細める。

聞いた話によれば彼は自らを殺そうとしていたという。

彼はカルサが戻ってくることを考えなかったのだろうか。

それとも。

「もう…元の貴方様には戻れないのですか?」

レプリカの呟きは静寂の中へと吸い込まれてしまった。