「誰も見ていない所ではフリをしなくていいんだぞ。君は常にリュナでいる必要はない。」

疲れた声、その感情をどうとらえたらいいのだろう。

血色の悪い頬を撫でていた手を止め、レプリカはサルスの頬にキスをした。

突然の出来事に思わずサルスの身体は反応する。

それでも優しさを含んだ暖かいタオルが彼の視界を遮っていた。

「誰かの前だけだと不自然になってしまいますわ。」

少し低めの落ち着いた声でレプリカは囁く。

「…君の真意が分からない。」

「真意?」

確かにリュナであり続ける必要があるのかもしれない。

しかし時折見せる今のような振る舞いにサルスは困惑していた。

別にサルスを愛する必要はないのだ。

私室でスイッチが切れた彼はカルサではない。

カルサになる事で全てを使い果たしたサルスがそこにいるのだ。

「君がリュナじゃないのは俺には分かる。姿はリュナでも中身は君だ、レプリカ。」

力なくソファから投げ出された彼の手をレプリカは両手で握りしめ、温めるようにした。